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村上は今までの人生の中で何を選び、何を捨ててきたのだろう。
想像もつかない。
もともとたいして彼女について知っているわけじゃない。
知っているような気がしているだけだ。
同級生というのは不思議だ。
集められて同じ校舎に三年間おしこめられていた、それだけのことなのに広い世界へ出たとたんなつかしい特別なもののようにそれを扱う。
昔から知っている、そんな錯覚が人を油断させるのだろうか。
眠れないついでに、鈴木弘幸がどんなやつだったのか思い出そうとしたが、何も思い出せなかった。
当たり前だ。
思い出せないんじゃない、知らないんだから。
同じ教室にいた。
それだけだ。
数年後、東京の居酒屋でいっしょに酒を飲んで、朝起きたら隣に村上がいるなんてことが起こると誰が想像しただろう。
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