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あまりにもよく眠っているから起こすのも悪い気がして、息をひそめたまましばらく村上を見ていたが全く起きそうにない。
仕方なく、そうっと起き出し、スマホを眺め、明るくなるのを待った。
冬の朝は遅い。
ようやく窓の外が明るくなった。
ほっとして身を起こし、忍び足で洗面所へ向かう。
身支度が済むと、お湯を沸かしコーヒーを淹れることにした。
とりあえずコーヒー。
間を持たせるのに便利な飲み物だ。
インスタントの粉をカップに入れてお湯を注ぐと香りが広がったのだろう、村上が目を覚ました。
二、三回目をぱしぱし瞬きした後、がばっと上半身起こしてここはどこ? というようにきょろきょろしてから、はっとしたように自分の胸元に目をやった。
服をきちんと着ていることを確認して、安心したような顔をしたことに、僕は少しだけ傷ついた。
「村上さんもコーヒー、飲む?」
「うん」
「ブラックでいい?」
「うん。ありがとう」
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