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「まさかそれ、本当に偶然だと思っているわけじゃないんだろう?」
彼は楽しそうにグラスの中の氷を回す。
「それって、どういう意味ですか?」
「あのねえ、偶然が重なったらそれはもう偶然じゃないんだよ」
彼はグラスを持ったまま僕の目を覗き込む。
「君だって、もうわかっているんだろう?」
黒く光るカウンターテーブルに横並びに座っているから、彼の方を向かない限り僕の表情は読みとられないはずだ。
わかっているのに、僕は素直に頷いてしまう。
「行かなければよかったんです」
「高校の時、その2人とは仲が良かったの?」
「全然」
僕は持っていたグラスの中身を一気にあおった。
「だから驚いたんです」
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