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「それはつまり、こういうことかな? 君は凛ちゃんの体だけじゃなく心も欲しい。だから、彼女に何もしなかったし、できなかった」
「違います」
「凛ちゃんのことが嫌い、ってわけじゃないよね? 嫌いな人を自宅に泊めるほど、君はお人よしには見えない」
「嫌いでもないし、好きでもありません。ただの同級生ですから」
「じゃあ逆に彼女が君のことを好きだった、とは考えられない? 全部、君の気を引くための嘘で大芝居を打って部屋に転がりこむところまでは成功したのに、真面目な君は指一本触れずにさよならと冷たく彼女を送り出した」
「あり得ないですよ、そんなこと。高校時代、僕は彼女に名前すら呼ばれたことがなかったんですから」
「じゃあ、卒業して六年たって初めて山田さん、と呼ばれたのか。そりゃなんだかすごい話だね」
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