僕は君に会いに行くよ

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「また何かあったんだね」  彼は薄く笑った。 「前に会った時はジンライムを飲んでいた」 「そうでしたっけ」 「何か悩み事でも?」 「別に」  嘘ではない。  僕自身には何も起こっていない。 「あの、もし僕が五百万円貸してくれと頼んだら、貸してくれますか」  「五百万?」  彼は笑った。 「それって返ってこないんだろう?」 「どうしてそう思うんです?」 「貸した金は基本返ってこない。そう思った方がいいとあらゆる本や雑誌に書いてある。銀行の融資とローンはまあ貸して回収するのが商売だから別だけど。だから、今の言い方は間違っている」 「間違っている?」 「そういう場合は貸してくれとは言っちゃいけない。下さいというべきだ」 「お金を下さいと言われて、はいどうぞ、とはならないでしょう? 五百円ならともかく、五百万ですよ」 「そうだな、五百円だろうと五百万円だろうと、あげるのならそこには何らかの名目ってやつが必要になる。名目っていうか言い訳っていうか、まあそんなもの。言い換えればは投資かな。わかりやすいだろう? 投資と考えれば、するかしないかはその投資物件しだいってわけ。例えば女の子に五百万円プレゼントする場合、それによって女の子が自分に抱いてくれるであろう好意、笑顔、あるいはひょっとして愛情、そういうものを見返りに期待するだろうけど、そういうものをその女の子から五百万円払ってでも欲しいかどうか、ってことだよね。欲しけりゃ投資の価値はある」 「女の子の笑顔に五百万は高くないですか」
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