僕は君に会いに行くよ

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                *   あれから、どうなったか気になっていたんだと会うなり鈴木が切り出した。  もちろん偶然会ったわけじゃない。  僕が呼び出したのだ。 「気になっていた?」  わざととぼけた声を出してメニューを広げた。  居酒屋やファミレスのメニューってどうしてこうも大きいんだろう。  二人席のテーブルは限りなく正方形に近く狭い。  膝の上に立てるようにして眺めながら鈴木の次の言葉を待つ。 「とりあえず、生でいいかな」  聞きながら顔はもうおしぼりと水を持ってきた店員に向けている。 「生二つ」 「生二つ、あとは」 「またあとで」  メニューを眺めたまま言うと店員は「かしこまりました」とにこやかに立ち去った。 「お前、あれからどうした?」 「あれから、って?」  わざと、とぼけた声で応じるとじれったそうに身をよじった。 「村上だよ、村上凛」 「ああ、村上」 「あれから、盛り上がった? まさか山田、オオカミに変身したりしてないよな」 「あの日は満月じゃなかったと思うけど」 「そういうことじゃなくて。もう、わかってるだろ!」  唇を上向きに引っ張って笑顔を作ってはいるけれど、その目はちっとも笑っていない。  これがこいつの本性か。
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