僕は君に会いに行くよ

48/165

38人が本棚に入れています
本棚に追加
/165ページ
「翌日仕事だったからさ、早く帰らないとね、うん。そう言っただろう? それだけ。別にあせってたってことはないよ」 「ふーん。まあ別にいいけどさ。でもさ、村上と偶然会ったって言ってたけどあれ嘘だよな?」 「だ・か・ら、何回も同じこと言わせるなよ。なんでそんな嘘をつかなきゃなんないの? あ、これうまっ。居酒屋の肉じゃがって、イモが大きいのにほっこりしててすげー味が染みてるよな」  僕が同じことを何回も言うのはお前がちゃんと答えないからだろ、察しろよ、それでうまく逃れたつもりなのか、お腹の底に言えない本音が溜まり始める。 「あのさ、僕、泊めていないとは言ってないよ」  鈴木の箸が止まった。 「え」  へらへらと赤かった顔が素に戻る。 「だってさっき」 「なんで村上を泊めなきゃならないの、とは言ったけど、泊めていないとは言っていない」 「じゃあ泊めたのか?」 「お前が本当のことを教えてくれたら、僕も本当のことを言う」 「なんだよそれ。意味わかんねーよ」 「意味がわかんねーのはこっちの方だよ。もう一度だけ聞く。あの日偶然に会ったなんて嘘なんだろ?」  どう答えるべきか悩むように目が左右にきょときょと動く。 「本当のことが知りたいなら、本当のことだけを言え」
/165ページ

最初のコメントを投稿しよう!

38人が本棚に入れています
本棚に追加