僕は君に会いに行くよ

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 噂。  なんだそれ。  鈴木が山田なら信用できる、と言ったのは。 「偶然のふりをして僕を選んだのは、僕なら村上に手出しをしないと思ったからなのか」 「そうだよ」  高校時代なんてクソだ。  心の底からそう思った。  みんなに陰で何か言われている、ということは感じていた。  他人の思惑などいちいち気にしていたらきりがない。  悪口を言われたからと感情的になれるほど僕は熱くない。  勝手に言っていろ。  どうせこの狭い校舎の中だけ、三年間だけのことだ、卒業して外へ出てしまえばもう関係ないことだと割り切っていた。  なのにさっき、お腹の底から熱い何かが逆流して頭まで突き抜けた。  自分の中にそんな感情があったことに驚く。  なんだか最近は驚いてばかりだ。
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