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ファミレスの一番奥の席で贔屓目に見ても二人分の席を占領している宇津木の前で、僕たち三人はぎゅっと固まっていた。
「どうしてカケルを呼んだんだ?」
鈴木がひそひそ僕に囁いた。
「だって僕ら三人で手に負える話じゃないだろ?」
「だからってカケルはないだろ」
「あ? 何だ。ひそひそ話してんじゃねえよ。感じわりいな」
村上は泣き出しそうな顔で固まったまま、ひとことも口をきかない。
「別に俺はどうでもいいんだよ。関係ないし。山田がどうしても、って言うから」
村上と鈴木がちらっと僕を見上げた。
「俺の意見を言わせてもらうと」
くわえていた長いスプーンをパフェグラスの中わずかに残ったアイスと生クリームの混じったコーンフレークに突き立てる。
「カケルがチョコパフェ食べてるっていうのがかなりこえーんだけど」
鈴木が小声でつぶやくのを僕は無視した。
パスタを食べていようと、お子様ランチを食べていようと宇津木は恐い。
そういう存在なのだ。
「この話、全部嘘だな」
組んだ足の爪先を揺らしながら鋭い目で僕らの顔を舐めるように見た。
「嘘?」
鈴木の顔がみるみるうちに険しくなった。
「なんだよ、村上が嘘をついてるって言うのかよ。そんなわけないだろ」
「村上が嘘をついた、とは言っていない。全部嘘だと言ったんだ」
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