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「カケル。顔、近いって」
悲鳴に近い鈴木の叫びを、手のひらを広げて制しカケルは村上の顔を見据えた。
挑発するように歪めた唇とは反対に、相手の表情のわずかな変化も見逃すまいとする隙を狙うような獣の目に僕は一瞬見惚れた。
こいつ、こんな目をするんだ。
いつもびくびくと目を逸らせていたから、知らなかった。
「無視できるほど忍耐強くないし、五百万円なんて持っていないし、こんなばかばかしこと、やってらんない」
まっすぐな、固い声だった。
「教えて。どうしたら、やっつけられる?」
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