僕は君に会いに行くよ

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                  *  宇津木の役は村上の元カレで、どうしようもないチンピラのDV野郎という設定だった。  我ながら素晴らしいキャスティングだったと笑いがこみあげる。  村上が宇津木から逃げるため、家を持たなかったという説明は彼女から抜けない優等生気質も信憑性(しんぴょうせい)信憑性を高めるのにおおいに役立ったことだろう。  そんな男が目の前に現れ、いきなり恫喝(どうかつ)する側からされる側になれば気が動転(どうてん)するのも無理はない。  レイナを締め上げると、驚くぐらいあっさりと全てを白状したらしい。 「最初からそのつもりで店長はあんたを雇ったのよ。考えたらわかるじゃない。あんたみたいに、たいしてかわいくもないし美人でもない、話下手の愛嬌のないテンション下がる女をさあ、なんでわざわざ入れるのよ。キャバクラで万年最下位、みんなのモチベーションをあげるための役割? でもさあ、それだけのために給料払うのも馬鹿馬鹿しいでしょ? 最悪住む所と食べる分くらいは保証してあげて働いてもらおうかなって。五百万なくしたってなれば当然払い終わるまでは仕事はやめれないしね」
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