僕は君に会いに行くよ

8/165

38人が本棚に入れています
本棚に追加
/165ページ
 書店内のアナウンスで「山田様、三番レジまでお越しください。忘れ物がございます」と呼び出され何も買っていないのに何だろう、ひょっとして何か名前がわかるような落としものをしたのだろうかと不思議に思いながら出向いたら山田違いだった、それが彼との出会いだ。  申し訳ありません、フルネームでお呼びするべきでしたと頭を下げる店員に「いや、よくある名字ですから」とにこやかに言ったあと「同じ名前のよしみでよかったらそこで一杯飲みませんか」と誘われた。 この書店とショットバーが気に入っているんです、と山田さんは言った。 「僕もです」 「それなら、また、お会いするかもしれませんね」  その言葉通り、それから一カ月もたたないうちに僕達は本屋で再会した。
/165ページ

最初のコメントを投稿しよう!

38人が本棚に入れています
本棚に追加