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「策士だなんて、そんな」
グラスに残っていた液体を一気に飲み干す。
喉が焼けて体が熱くなった。
「めでたし、めでたし、ってわけだ」
彼は相変わらずウィスキーをロックで飲んでいる。
しばらく黙ったまま書店フロアを眺めた。
金曜日の二十時時三十五分。静かに本をめくる人たち。
みんな何かを求めてここにいる。
名前も顔も知らない人たちが同じこの場所にいる偶然を思う。
偶然。
この世の中に起きる出来事は、いったいどこまでが偶然の産物なのだろう。
僕と鈴木と村上と宇津木が同じ高校の同じ学年という偶然、今現在出身地である栃木ではなく東京にいるという偶然、そこから始まった出来事は偶然なのか必然なのか。
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