僕は君に会いに行くよ

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「親が離婚したらしい」 「は。まあ、よくある話だな」  顔を赤くしてはふはふとカレーを食べながら平然と言う。 「優等生のいい子ちゃんには堪えたかもしんないけど。ああいうタイプはぽきりと折れるんだな。俺、本当は東京に出てから村上を見かけたことがあるんだ」  ─カケルと会って、ダメになった。  村上の声が蘇ってはっとした。 「テナント募集のビルがあってさ、その担当の人と打ち合わせがあったわけよ。ひとつのビルの中にいろんな会社とか店とかあってさ、そこで空きが出たから貸すにあたっての条件の打ち合わせとか、現場の感じを見に行ったりとかしてまあそういうのが今の俺の仕事なんだけど、そこでトイレに行きたくなってさ、で行ったら清掃中で、そんで掃除してたのが村上だった」
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