僕は君に会いに行くよ

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 思いついてしまった自分が嫌になる。   僕はスプーンでカレーをかき混ぜながら切り出すべきか迷っていた。  もう、関わる必要はない。  十分だ。  なのにやっぱり、言ってしまう。 「宇津木君。あのさ」 「君、はよせ。気持ち悪い」 「宇津木、あの」 「何だよ」  かつて(いじ)められていた相手を呼び捨てにするのは心臓に悪い。  心も体も自然に防御態勢に入ってしまう。  過去の習慣とは恐ろしい。  そんな習慣を僕に植え付けた宇津木も恐ろしい。
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