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まだ肌寒さが残る3月
私は勢いよくリビングのドアを開けた
「お母さん!」
一瞬驚いた顔をしたお母さん、私を見て
すぐにいつもの表情になる
「どうしたの?」
「受かったよ!大学!第一志望の!」
早く報告したくて
走って階段を降りてきたから息がきれる。
「やったじゃない!よく頑張ったね」
臨月のお腹をさすりながら
満面の笑みで喜んでくれるお母さん
「うん!」
私はお母さんに駆け寄り
大きなお腹をさすりながら
喜びを噛みしめた。
私のお母さんは若い頃、デパートに勤めていたが
野球選手だった父との結婚を期に退職して
今は専業主婦をしていて
家事に育児に奮闘中である
そんな両親のもとで産まれた
私の名前は春海麗奈18歳
高校3年の受験生だ
2つ下に双子の弟がいる
弟たちはお父さんの背中を見て
野球選手になる夢を追いかけている
そんなお父さんは昨年、現役を引退した
今は前にいたチームのコーチを務めながら
休みのときは弟たちに野球を教えている
私はと言うと
兄弟の中で唯一の女でお父さんには特に
愛情いっぱいに何不自由なく育てられた
特技までとはいかないがピアノを小さな時から
習っているくらいで
私には弟たちのように何かになりたいという
夢がない
大学も絶対に行きたかったわけではないが
自分にも何かが見つかるかもしれないと思い
進学を決めた
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