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天音先輩の二回目
人生初のスカイダイビングを終え、近くのファミレスで休憩を取ることになった。昼の時間を過ぎているためか、店内は閑散としていた。
「ホント、先輩は怖いもの知らずですよね。日本一怖いジェットコースターに30回乗って、全国のバンジージャンプスポット制覇、あとはお化け屋敷の特徴を攻略……」
「ウォータースライダー、それからジップラインも大好物だぞ。考えただけでもゾクゾクが止まらないな。肌が粟立って、全身が脈打つようなあの感覚が堪らないんだよ」
先輩は恍惚の笑みを浮かべながら、自分の身を抱きしめた。俺は呆れて額に手を当てる。
「俺には理解できないですよ。なんで寿命が縮むようなことに、自分から突っ込んでいくのか。心臓がいくつあっても足りない」
「ふふ、君の言う通りだな。でも、理解できないと言いながら、君はいつも私に付き合ってくれているじゃないか。つくづく君というやつは、お人よしだな」
「そっ、それは別に、先輩だから断れないというか」
異性として「気になってる」なんて口が裂けても言えない。きっと先輩のことだから、おちょくって馬鹿にしてくるだろう。そんなことされたら、俺のプライドはズタズタだ。動揺を悟られないように、すぐさま話題を変える。
「それにしても、初めてであんなに楽しんでいるの先輩くらいでしたよ。他のお客さん、先輩が飛び降りた後めっちゃ怖がってましたし」
「そうなのか。その怖がってる人たちの顔、見てみたかったなぁ」
「前から思ってたんですけど、先輩って結構ドSですよね」
「バレたか」
「隠すつもりないでしょう」
「ご名答」
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