12人が本棚に入れています
本棚に追加
先輩はフッと息が漏れるように笑い、オレンジジュースに口を付けた。グラスの中で氷がカランと音を立てる。
「まぁ、思ったよりゾクゾク感は少なかったな。飛び降りるのは、初めてじゃないし」
「二回目だったんですか? それなら、ちゃんと言ってくださいよ。飛ぶ前にあれだけ脅しといて酷いですよ」
「だから、スカイダイビングは初めてだって言ってるだろ」
「は? さっき初めてじゃないって言いましたよね? どっちなんですか?」
「だーかーらー、初めてじゃないんだよ。飛び降りるのは」
先輩の語気が強まる。苛立ったように頬杖をついて、そっぽを向いてしまった。
「それって、どういう……」
「あーもう、君は勘が悪いな」
先輩は長い髪を鬱陶しそうに耳にかけた。その仕草が妙に色っぽくて、ドキドキする。艶のある髪がさらりと揺れる。露わになった顔の輪郭はシャープだ。その輪郭をなぞるように目を移していくと、額からこめかみにかけてうっすらと存在する傷跡に目が留まった。
最初のコメントを投稿しよう!