天音先輩の二回目

2/3
前へ
/9ページ
次へ
 先輩はフッと息が漏れるように笑い、オレンジジュースに口を付けた。グラスの中で氷がカランと音を立てる。   「まぁ、思ったよりゾクゾク感は少なかったな。飛び降りるのは、初めてじゃないし」 「二回目だったんですか? それなら、ちゃんと言ってくださいよ。飛ぶ前にあれだけ脅しといて酷いですよ」 「だから、スカイダイビングは初めてだって言ってるだろ」 「は? さっき初めてじゃないって言いましたよね? どっちなんですか?」 「だーかーらー、じゃないんだよ。飛び降りるのは」  先輩の語気が強まる。苛立ったように頬杖をついて、そっぽを向いてしまった。 「それって、どういう……」 「あーもう、君は勘が悪いな」  先輩は長い髪を鬱陶しそうに耳にかけた。その仕草が妙に色っぽくて、ドキドキする。艶のある髪がさらりと揺れる。露わになった顔の輪郭はシャープだ。その輪郭をなぞるように目を移していくと、額からこめかみにかけてうっすらと存在する傷跡に目が留まった。
/9ページ

最初のコメントを投稿しよう!

12人が本棚に入れています
本棚に追加