にじいろカラフル

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   小さな頃から絵を描くことが好きな子どもだった。モチーフはなんでもいい。描くこと。その行為がただただ楽しかった。 紙と画材さえあれば何時間でも書き続けられたのは昔の話だ。一体、いつからだったのか。楽しさの中に少しばかりの痛みを伴う様になったのは……。 一人っ子故に両親の愛を一身に受けて育った。思い返せば何をするにも褒められていた。つまりは、甘やかされて育った。その言葉に尽きる。 家の中では誰かと比べられることも、争うこともなく、平和な世界で生きてきた。今思えば、まるで王子様みたいな扱いだった。 そんな俺も、オトナへと近づくにつれ、だんだんと世の中の洗礼を受けることが増えていった。 家から一歩出ると、そこは戦場だ。誰かと比べられることも、競い合うこともある。負けたくなければ、勝つしかない。 勉強も運動も人並み以上に出来ている自信があった。このままいけば人生楽勝。そんなことまで思っていた。  けれど、それは小さな世界での話だった。たまたま同じ学区に住んでいた子供たちが寄せ集められただけの小さな世界。そこでの勝ちは何の意味も持たない。世の中には沢山の人が存在し、思っている以上に世界は広い。 秀でた戦闘能力の無い兵士に出来ることといえば、手に持っているレベルの低い武器をあの手この手でバージョンアップさせること。そして、それを死に物狂いで振り回すことだけ。  何かを勝ち取りたいのなら誰よりも努力する。自分を信じて前だけを向き、何度でも何度でも、その足を踏み出す。
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