とあるフィギアスケートペアの一日

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 思えば不満があったかもしれない。  スピン、リフト、ジャンプ、ステップシーケンス。  どこを取っても適度なところで手を打ち、はっきりとどこが悪いと言わず。 「エリちゃん、次から僕のこう手を広げたタイミングで飛び込んできて。そうしたら、僕もうまく捕まえられると思うんだ」 「私が振り向く前に手を伸ばすから、それで間合いを計って。あなたのタイミングで私も飛び込むわ」  相手と合わせることが大事なフィギアスケートペア。  強い自己主張は遠慮した。  相手を傷つけなくなかったから。  でも、どこか噛み合ってないのは分かっていて、徐々に不満は蓄積されていった。
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