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「いたっ何してるの、ちゃんと受け止めてよ。怪我するじゃない」
「もう、うんざりだ。さっきから、エリちゃんが勝手に降りようとするから、スピンの途中じゃあ、僕が支えきれないの、分からないの?」
ある日、私がツイストリフトから派手に氷の上に落ちたのも、現実に積み重なった空虚なものが引き起こした、起こるべくして起こったアクシデントだったろう。
ジョセフも霞を掴むのと似た繰り返しに、いい加減にしてもらいたいと、ある日突然、はっきりと知ったのだ。
私はジョセフが悪いからと思った。
私ももう、ジョセフを偏屈などんくさい野郎としか思ってなかった。
フィギアスケートペアは女性が担ぎ上げられたり、投げられて回ったりし、アイスダンスが社交ダンスと言われるのに対して、ペアの演技はアクロバットの演技と言われる。
スロージャンプなど二メートル近く放り投げ出され、うまく着地できずに倒れたら、肘や膝が痣だらけだ。
リフトなど、頭上高く私の胴体を支えて、私が体を広げた後、ぼろっと零れ落ちたりするから、下に落ちたら脇腹骨折や内蔵損傷のリスクがある。
上に放り投げるツイストリフトは、私が空中で二回転から三回転し、男性に受け止められる。これも下に落ちたら、大怪我になる。
そんな体勢、お互い、信頼し合ってないと成功するわけない。
でも私らは、高評価が狙える点数ばかり狙って、お互い、機械的に動いた。
それもうまく行かなくて、自分らをムチ打って動かした。
でもうまく行かなくて、お互いがポイントを取れない情けない者にしか見えてなかった。
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