とあるフィギアスケートペアの一日

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 相次ぐ転落による打撲により、私の体はぼろぼろだ。  外傷性頸部症候群により、めまいや頭痛が襲って来る。脳震盪などもしょっちゅうだ。  一昨年の一年はリハビリでシーズンを棒に振った。世界選手権、ひいては最大の目的のオリンピックまで含めて、取り組んでいくシーズンを前に、もうスケート無理なのじゃないか、辞めなきゃいけないだろうかと悩んだ。  そんな時だ、アメリカ人フィギアスケーターのジョセフと出会ったのは。  所属団体から紹介されたジョセフは、日本は新天地で、これから私と新たな挑戦がしたいと言ってくれた。  それからが本当に挑戦だった。お互い、新しいパートナーで、踊り方、音楽の選び方、衣装、何もかも一からやり直しをした。  フィギアスケート選手は、優勝しか注目されない。  練習の資金を提供してくれるスポンサーや、自元のファンクラブの人たちは、資金や時間を私たちに提供してくれている。期待に応えるには、優勝しかない。  海外の相次ぐ強豪の優勝がニュースに流れる中、私らの精神はぎりぎりに追いつめられる。  こんなものは嫌だと逃げることもできない。この世界のどこに、逃げて問題から逃れる場所があるだろう。逃げても問題は消えない。逃げたら余計に苦しくなるだけだ。  追いつめらて、さらに追いつめられる。それは心にも苦しいことだが、肉体的にも重く過酷なものがあった。
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