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「エリちゃんが先に動いてくれたら、僕はついていくよ」
「基軸の足の入りを揃えましょう。入るタイミングをいちいち全部揃えていくのよ」
「違う違う、そんな動きじゃ、全然揃ってないぞ」
コーチからは厳しい声が飛んだ。
スケートを滑るほどに、命を懸けたリフティングも、息を合わせたステップも、回転を合わせたスピンも、どんどんとずれていった。
「いったん、外へコーヒーでも飲みに行かないか?」
ある日、ジョセフは困り果てた顔で近づいてきて、私を外に誘った。
「いいわよ」
厳しい練習の毎日に疲れていた私も、息抜きになることを求めていた。
「僕、カントリーソングが好きなんだ」
その日、ジョセフは川沿いの遊歩道の階段で私の横に座り、自分のことをぽつぽつと喋った。
「へえ、ダンス曲じゃ、サティとか雅楽なんか選んでるのに、そうなの?」
「うん、それも昔のエルビスとかのほうが好きなんだ。そっちのが落ち着く」
ジョセフのことを聞いてみると、アメリカのテレビやポップスが好きな普通の青年って感じだった。
(なんだか、けっこう素朴な人なのねえ)
アメリカ人ってのりのりで音楽で踊る連中としか思ってなかった。
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