とあるフィギアスケートペアの一日

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 (この広い世界で、何の因縁か、日本の片隅でフィギアスケートやっている私とペアを組むことになったんだから、奇特な人だわ、ジョセフは)  冬の川沿いは、白い雪が少し残っていて、温かいコーヒーを飲むと気分が軽くなっていった。  私は坊主憎けりゃ袈裟まで憎しぐらい腹が立ったこと、さんざん、気に入らないことを言われたことを忘れていった。  大っ嫌いなジョセフの前髪を上げた髪型も、鼻の高いアメリカ人の顔も、言い出せなくて袋に王様の耳で投げ込んでいた降りつもった恨みも、それでもう気にはならなくなった。  私はコーヒーを飲むと、スケートリンクに戻り、思いっきり今までの憂さを晴らす踊りを踊った。そこで初めて、ジョセフと心良く滑ることが出来た。
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