【1】Vsinger

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【1】Vsinger

〜東京都台場〜 エンターテイメント会社TERRA(テラ)に、新設されたコンサートホール。 最新の4D技術を駆使したステージと客席。 水が、風が、熱が、香りが、振動が、光が、会場にいる皆んなを、臨場感ある世界へ導く。 そのオープニングイベントが始まった。 一瞬真っ暗になり、何処からか優しい香りの風が漂よい始める。 ステージに、ぼんやりと明かりが灯り、ラブがピアノの静かな音色を奏で始めた。 トーイ・ラブの澄んだ清らかな歌声が、少しずつホールに明かりを灯す。 『The beginning 〜始まりの唄〜』 柔らかな歌声に惹かれて、ピアノの音色がついて行く感じ。 ラストには、彼女しか出せない高い声が、心地良く響きわたる。 「皆さん、ようこそ。ラブです」 その言葉を待っていたかの様に、大きな拍手と歓声が、ホール全体を包み込む。 次の瞬間、ステージ左が、「ボッ🔥❗️」と燃え、熱波が二階席まで伝わる。 その爆炎から、山本リサが現れた。 「こんにちわ〜TERRAのリサです」 今や爆発的人気の彼女にも、大きな拍手が送られる👏👏。 「さぁ、ラブさん!始まりましたね」 「何かリサさんの方が、拍手多かったんじゃない?爆炎まであったし」 笑いと拍手が巻き起こる。 「お心遣い、ありがとうございます」  ラブが客席に一礼する。 「さて今日は、この新しい4D体感型ホールに、たくさんのアーティストさん達がやって来てくれてます」 「ありがたいことです。TERRAの4Dは半〜っ端ないですからね、皆さん、覚悟いいですか?」 問いかける様な喋りに、笑いが起こる。 「笑ってる場合じゃないですよ。さっきは、優しい自然をイメージした歌でしたから、良かったですが…雨の歌歌ったら、雨降りますからね!傘☂️持ってますか、皆さん?」 真顔のラブに、少し戸惑い感が漂う。 「マ…マジですか、ラブさん⁉️」 「これぞTERRAって、ねっ❣️」 「いやいやいや💦困りますよ」 「宇宙の歌の時は、私は酸素マスクして歌うから、皆さんも座席下のマスクを付けてくださいよ」 思わず皆んな座席下を覗く。 「…なわけないじゃないの、あの前のお兄さん、マジ慌ててましたよ❗️」 あり得ないと思いつつも、つられたお客達が、笑いながら拍手で誤魔化す。 「ラブさん💧あなたが言ったら皆んな信じちゃいますよ、全くもう」 「失礼しました。でも…結構来ますからね。最初だから、加減も分からないし。皆さんは、ラッキーな実・験・台、ということで、エヘッ❣️怒らないでくださいね〜」 「エヘッ、っじゃないでしょ💦もう〜。あっ、が入ってますよ、ラブさん」 ステージの端で、マネージャーの新咲凛(しんざきりん)がラブを呼んでいた。 「では、冗談はこれくらいにして。今日は何と❗️今ネット界でラブさんに迫る人気の、Vsingerグループ、Angel(エンジェル) corpse(コープス)の皆さんが来てくれてます❣️」 盛大な拍手と歓声が起こる。 「凄いですね💦。TERRAでは初めての、バーチャルシンガーさんの登場です。Torch(トーチ)さん、Red(レッド)さん、Fairy(フェリー)さん、Heaven(ヘブン)さん、Witch(ヴィッチ)さんの5人グループ。私も楽しみです❣️」 「では、皆さん。Angel(エンジェル) corpse(コープス)さんのステージをお楽しみ下さい❗️」 ステージが再び暗闇に包まれた。 ラブは凛の元へ急ぐ。 「ヴェロニカが、ロシアのサンクトペテルブルク空港で見つかりました」 「故国へ帰ったのね」 「問題は、同時に一部のロシア軍に動きが見られ、どうやら軍部の指示ではない様子」 「まさか…」 「あり得るかと」 「アイとT2に監視を。私はクレール大統領と話してみるわ」 ステージには、エレクトリックなミュージックが流れ、ホログラム用の光が差し込み、バーチャルシンガー達の姿が、現れ始めていた。
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