【1】Vsinger

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〜警視庁凶悪犯罪対策本部〜 70階のTERRAの隣にある30階建てのビル。 その3階が刑事部刑事課のフロアである。 遅番勤務の神崎昴(かんざきすばる)が、イヤフォンを付けて、PCに釘付け状態。 後ろから忍び寄った、宮本淳一(みやもとじゅんいち)が、不意にプラグを抜いた。 課内に、エレクトリックな音楽と、綺麗な女性たちの歌声が響き渡る。 「ちょっと💦淳さん❗️」 「何をコソコソ聴いてるかと思ったら、アニメかよ」 「あら、この曲はAngel corpseね」 「えっ!咲さん知ってるんすか?」 刑事課のほぼボスキャラ、鳳来咲(ほうらいさき)。 「当ったり前じゃないの。今大ブレーク中よ」 「今隣のTERRAに来てるんです❗️」 昴が興奮して隣を指さす。 「来てるって言っても、アニメだろ?」 「違うな。バーチャルシンガーってやつだ」 「さっすが、元公安の戸澤(こざわ)さん、良くご存知ですね✨」 公安は関係ないよ昴君。 「伊達(だて)に公安やってた訳じゃねぇからな!」 戸澤…💧 「淳、つまりあれは、コンピューターグラフィックとホログラムが一体化した様なものよ」 「はぁ?」 「正確には、Youtuberと同じく、YouTubeにおいて活躍してるVtuberさんがいて、アニメは何枚もの絵をつなぎ合わせた動画に、声優が声を入れますが、Vtuberさんは、動いている人間に合わせてキャラクターが動くのよ、だから、アニメのキャラクターよりもリアルな人間らしい動きが表現できるの。ね、昴さん?」 「さすが紗夜さん。人間の動きを反映させるモーションキャプチャによって、3DCGでキャラクターを作り、Webカメラやヘッドセットを使って、人間の動きや表情をデジタル化させ、キャラクターに反映させる仕組みなんです」 「………」「………」「………」「………」 淳一、咲、戸澤、さらに部長の富士本まで加わった。 「じゃあ、あれは人がやってるのか?」 「そういうことです、部長。声は、Vtuberさんが出してる声をソフトを使って変換したり、歌の時は、全てソフトが流したりしてます」 「凄いな。こんなライブがあるとは…」 「う〜ん」頷く4人。 「TERRAの技術は更に進んでて、高度なホログラムと3DCGを複合させることで、より実体感を出してます。だから掠れたりせず、肉厚感ある仕上がりになってるんです!」 「確かに、本物みたいだな」 「で、そいつらはどこに?」 さすが戸澤公紀(こざわきみのり)。 「Vtuberさんの多くは、知られていません。TERRAの通信網なら、本人は東京の自分の仕事部屋に居るんだと思います」 「何だって⁉️どこのどいつか、昴も知らねぇのか?」 「きっとゲームオタクみたいな、男達がやってんじゃない?キモっ💧」 「さて咲さん、部長、一杯やって帰りましょうか?」 「そうだな…。じゃあ、紗夜、淳、昴、よろしくな。おやすみ」 「お疲れ様でした〜」 3人共、いつしかAngel corpseに見入っていた。 「天使の(しかばね)…ね」 宮本紗夜(みやもとさや)、淳一の妻であり、読心能力を持つ心理捜査官である。 「ええ、俗世界を皮肉った歌詞が、若者に人気なんです。特に、Heaven(ヘブン)さんとWitch(ヴィッチ)さんがソロでやってた時の歌は、過激でした」 「何にせよ、歌っていられる内は平和ってことだ。紗夜、見回りに行こうぜ」 「そうね、昴さん何か買って来ましょうか?」 「大丈夫です。ありがとうございます」 2人が出て行く。 この夜は、珍しく特に何もなく、平和に過ぎたのであった。
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