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〜臨時対策本部〜
消防による、懸命な作業が行われているが、全く歯が立たない。
「こんなバカな!なぜ傷一つ付かない?」
その状況に目をやる紗夜。
「ラブさん、恐らく中から…」
「あの裏側に六芒星がある。富士本さんに無駄だと伝えて。私は七森華奈に、会うわ」
「ラブさん…分かりました、気を付けて」
(ありがとう紗夜さん)
紗夜の気遣いに、熱いものが込み上げる。
膝をつき、精神を集中させるラブ。
(アイ侵入を!)(分かりました)
ラブの心を、闇が包み込んでいく。
(彼女の深層心理へ…)
悟られない様に、慎重に進む。
(深い…これが人の心?)
その時、闇の中に一点の光が見えた。
(あれは!)
「ビュン!」「グッ…」
光の矢が、ラブを掠めた。
急いで戻って来た紗夜が驚く。
「ラブさん、血が❗️」
右脇腹の衣服が切り裂かれ、血が滲む。
苦痛を噛み締めるラブ。
「誰か救急キットを❗️」
叫んだ紗夜が、傷口を手で圧迫する。
「ウッ!」
荒れ狂う闇が、紗夜の心に入り込む。
(紗夜さん…⁉️…気付かれた❗️)
(…ラブさんなの?それにもう1人いる)
(華奈さん、あなたの気持ちはよく分かった。これ以上はやめて、私に任せて)
(無理よ、もう遅い。それに…ラブさんに…彼ら全員を止められる?記憶を消しても、いつかはたどり着いてしまう可能性が残る。殺るしかない)
決して自暴自棄の犯行ではない。
使命として、悪魔を貫くつもりの華奈。
(華奈さん、望みを捨ててはダメ!)
その声に、闇の中から華奈が現れた。
(…紗夜…さんだっけ?警察なんか…信用しない。邪魔だ、私の中から消え去れ❗️)
ステージでは、Witchが叫び、腕を振り下ろした。
獄炎の刃が紗夜を襲う🔥。
「…もうダメか⁉️」
死を覚悟したその時。
「何っ?」
燃える刃は、寸前で止まった。
精神世界での戦いであれ。
華奈の表情が鋭さを増す。
「誰だ…おまえ❓」
華奈の心には、燃える刃を掴み止めた、1人の少女が見えていた。
「さ・や・は・殺・ら・せ・な・い❗️」
「キャッ…」
「ダンッ!」
華奈の実体が弾き飛ばされ、背後の壁にぶつかって、倒れた。
ステージのWitchも、同じ様に飛ばされて倒れる。
何が起きているのか分からない会場。
だが、今はそれよりも、何とかして逃げることが優先であった。
必死でもがくが、依然として呪縛は強く、椅子からは離れられない。
(お・ま・え……コ・ロ・ス❗️)
瞬時に移動した少女の手が、華奈の首を握って持ち上げた。
Witchの体が浮き上がり、首に指の形の凹みが生まれる。
しかし…苦しみの喘ぎはない。
ゆっくり燃える目を開き、少女を見下ろす。
(逃げて、紗夜❗️)
強烈な炎が🔥華奈から燃え上がり、少女もろとも紗夜を吹き飛ばした。
丁度様子を見に出てきた淳一。
突然吹き飛び、転がった紗夜に駆け寄る。
「紗夜❗️どうしたんだ?大丈夫か⁉️」
「ら…ラブさんが…」
無数の傷を負いながら、踏み留まるラブ。
そこに…未だかつて、対峙したことのないモノがいた。
(アイ、今よ!)
絶対的優位に立つ時、隙が生まれる。
ラブを通じて、エネルギー生命体であるアイの一部が、システムに侵入した。
(七森…華奈さん。あなたは悪魔の代償を分かっていない❗️)
(なに?)
意外な言葉に、つい耳を傾ける。
(私はこの命を悪魔に捧げた。…もう私には時間がない)
(そんなもので❗️あなた1人の小さな命で、こいつが満足するはずないじゃない❗️グッ!)
威圧が、ラブの心身を押し潰しにかかる。
両腕で受け止めるラブ。
地に足が沈み、身体中の傷口から、血飛沫が飛び散る。
(あなたは、8000人の命と引き換えに、その力を得たのよ❗️)
(は…八千人?…そんな、まさか⁉️)
(こいつは、あなたのお母さんの命も奪ったのよ!そんな奴を信じてはいけない❗️)
「フッ…」
炎が…消えた。
崩れ落ちるラブ。
紗夜と淳一が駆け寄る。
「ラブさん…誰か、誰か助けて❗️」
(紗夜さん…華奈さんを、必ず守ってあげて…)
意識のないラブの残留思念が、紗夜に伝わる。
その理由を知った紗夜。
そこへ凛がやって来た。
「淳一さん、TERRAヘ運ぶから手伝って」
「分かった。死ぬなよラブさん」
弱り切った姿には、凛でさえ焦りを覚えた。
(出血が…止まらない…急がないと)
普段なら直ぐに塞がる傷が、治癒しない。
(今は…不安に流されてはいけない)
ラブの予想した未来は、何としても防ぐ必要があった。
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