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「着いたぞ」
地元の高校の友人である佐藤の言葉に我に返る。
車のトランクからキャリーバッグを取り出す。
白く濁った地面に降ろすと、土混じりの雪がぐしゃりときしんだ。
昨年9月以来、半年ぶりの実家。
地方都市の郊外にある一戸建ては、重く低い空の下、頭に白い雪を被っている。
「ありがと。助かった」
「運が良かったな」
駅から歩いて30分かかる道のりは、雪の降り積もる季節には辛い。
タクシーを拾おうとしたとき、ちょうど駅横の駐車場に向かう佐藤と出くわしたところだった。
「じゃあ18時に、八兵衛で」
「おう」
キィと、唸る錆びついた門扉を開け、敷地に入る。
郵便受けは溜まっているのか、裏側の隙間から紙の切れ端のようなものが覗いていた。
鍵を回してボンと開くと、大小色とりどりの紙が堰を切ったようにどさりと落ちる。
スーパーのチラシ、消費者金融のビラ、なじみのない市政だより。
目張りしておけば良かった。
雪の上に降り積もった紙の山からひとつずつ拾っていると、1通の白い封筒が目に止まった。
「鈴木 健太 様」
高校を卒業し実家を出て20年。自分宛ての手紙を実家で目にするのは珍しい。
封筒の裏を見て、さらに驚いた。
「鈴木 健太 より」
差出人は、自分だった。
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