タイムカプセル・エンゲージ

11/15

19人が本棚に入れています
本棚に追加
/15ページ
約束の日。 あの日と同じように雪が降っていた。 約束の時間まで高校への通学路だった通りを歩いてみる。 土曜日だというのに人通りはまばらで、道路沿いの店の多くが灰色のシャッターを降ろしたままだ。 2人で行ったカラオケボックスも、潰れて空き地になっていた。 バス停の時刻表を眺めてみる。 1時間に2本はあったはずのバスは、2時間に1本となっている。 当たり前のようにあった世界は、気づかないうちに形を変えていた。 20年という時間の長さに浸っていると、最後に聞いた声がはっきりと蘇ってきた。 (約束ですよ。20年後ですからね!) コートのポケットからスマホを取り出し、時間を確認する。 液晶画面がちょうど19の数字を表示したとき、雪を踏み近づく音に顔を上げた。 夢を見ているに違いなかった。 タータンチェックのスカートに、紺色のブレザー。 ショートボブがふんわりと揺れる顔には、大きな瞳。 異なっているのはマスクをしているくらい。 20年前のあのときと変わらない少女が、目の前にいた。
/15ページ

最初のコメントを投稿しよう!

19人が本棚に入れています
本棚に追加