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約束の日。
あの日と同じように雪が降っていた。
約束の時間まで高校への通学路だった通りを歩いてみる。
土曜日だというのに人通りはまばらで、道路沿いの店の多くが灰色のシャッターを降ろしたままだ。
2人で行ったカラオケボックスも、潰れて空き地になっていた。
バス停の時刻表を眺めてみる。
1時間に2本はあったはずのバスは、2時間に1本となっている。
当たり前のようにあった世界は、気づかないうちに形を変えていた。
20年という時間の長さに浸っていると、最後に聞いた声がはっきりと蘇ってきた。
(約束ですよ。20年後ですからね!)
コートのポケットからスマホを取り出し、時間を確認する。
液晶画面がちょうど19の数字を表示したとき、雪を踏み近づく音に顔を上げた。
夢を見ているに違いなかった。
タータンチェックのスカートに、紺色のブレザー。
ショートボブがふんわりと揺れる顔には、大きな瞳。
異なっているのはマスクをしているくらい。
20年前のあのときと変わらない少女が、目の前にいた。
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