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お久しぶりです。
先輩がこの手紙を読んでいるときには、私はこの世にいないでしょう。
手紙を渡した娘から聞いているかもしれませんが、病気をこじらせてしまって。
約束させておきながら、ごめんなさいね。
まずは、あの日付き合ってくれてありがとうございました。
先輩も辛かったはずなのに、私のために嫌な顔せず付き合ってくれて。
卒業したら会えなくなるとわかってたから、最後に2人だけで過ごせてとても幸せでした。
今日で忘れよう、と思って誘ったはずなのに、消そうとした想いはバス停での別れが近づくにつれどんどんと積もっていくばかりでした。
だからあんな、今思えば馬鹿な約束をしてしまって。
でも言った瞬間、私は20年後も先輩のこと好きだろうって確信してたんですよ。
その気持ちは少しずつ変化しましたが、私の心にずっとあります。今も。
高校を卒業し働くうち、縁があって別の方とお付き合いし、家庭をもち子供もできました。
娘、私に似てるでしょ? 当時の私の写真と見比べてみてください。
もしかしたら手紙を受け取るとき私と間違えたかも、なんてね(笑)
私を囲む人や生活が変わっていっても、毎年3月になるとあの日のことを思い出し、その度に胸がきゅうと締め付けられました。
もし、先輩が私を好きでいてくれていたとしたら、今頃どんな日々を送っていたかなって。
でも、これでよかったんだって、思えるようになったんです。
姉から先輩と結婚するって話を聞いてから。
親族の顔合わせのときに驚かせようと思っていたのですが、その機会がなかったのが残念です。
私は、田中冬実の妹です。
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