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実家に帰ると、居間のストーブに火をつけ、2階の自室から引っ張り出してきた高校の卒業アルバムをぱらぱらとめくってみる。
3年2組と書かれたページ。
今は見る影もないあどけなさを残す自分の斜め下に「田中冬実」の文字と顔。
ストレートな前髪が少しかかるぷっくりとした目。
教室の隣同士の席で話しているとき。
日直で一緒に授業の用意をしているとき。
朝、校門の前で会ったとき。
何気ない会話でその瞳が形良い三日月になる笑顔に惹かれていた。
20年前の冬実の笑顔を見ていると、懐かしさに胸が苦しくなる。
そこにもう一つ、何とも言えない感情が灯り、不思議な気持ちになる。
思い出した。
告白しなかったのではなくて、できなかったあの日のことを。
彼女と20年後の約束をした、あの日のことを。
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