19人が本棚に入れています
本棚に追加
/15ページ
「LOVE! AND DEATH!! YOU〜!!!」
腕を引かれるように半ば強引に連れて行かれた先は、高校から歩いて数分のカラオケボックス。
ゆったりとした失恋ソングでも歌うのかと思ったら、部屋に入るなりソファに飛び乗り、重厚なギターリフから始まるラウドロックの曲に合わせシャウトし始める田中。
さっきまで聴いていた幼さをまとう声が、聴いたことがない地を這うようなハスキーボイスへと変貌を遂げている。
「ほら先輩! 合わせて!」
呆気に取られている俺に、腕を振り上げて挑発してくる田中。
こうなりゃ、ヤケだ。
田中と同じようにソファに立ち上がり、向けられたマイクに向かって力の限り叫ぶ。
「LOVE! AND DEATH!!」
「まだまだ!」
「LOVE! AND DEATH!!」
「もひとつ!」
「って俺ばっかじゃなくて、お前もやれ!」
マイクを持つ田中の手に手を重ねて向け返すと一瞬だけはっとした表情を見せたが、大きく息を吸い込み最後のワンフレーズに備えはじめた。
轟音の波が最高潮に達するのにあわせ、2人でそれぞれ胸につかえていた感情を1つのマイクに思い切りぶつけた。
「LOVE! AND DEATH!! ME〜!!!」
最初のコメントを投稿しよう!