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第九話
れいこは、いつも自分は服を着たまま優位なポジションでことに及んでいるのだが、今日は珍しく自ら全ての服を脱ぎ捨てた。
れいこの何も纏わない姿は容姿と同様、誰よりも美しい。
真珠より美しい白で絹より滑らかな肌。身体のラインは寸分の狂いもなく美しい曲線を描いている。
薄く華奢な身体。だが病的ではなくその華奢な中にもしなやか筋肉がある。
決して豊かではない胸なのにどうしてこのようにそそるのか。それは絵画の女神さながらの美しさだからか。
全てにおいて圧倒的な美しさ。
どれだけの人を傷つけてきたのかは数える方が馬鹿らしいほどなのに、この身体は傷が何一つなく、聖なる処女のよう。
人を傷つけるたびに彼女の身体は美しくなる。人を罵るほどに彼女の身体は輝きに満ちていく。
「あぁ、可愛いすみれちゃん・・・。」
悦びを表すように動くその手足。
「貴女と早く一つになりたいの。」
興奮の絶頂に達するその顔。
「はぁ・・・あぁ・・・早く欲しいの。」
甘美なるその喘ぎ声。
「私が、この手で壊したいの。」
陶酔し切ったその瞳。
ついていけない。
この美しさに、この欲望に。
耐えられない。
喰われる。
もう、れいこは完全に破綻している。
「悪魔・・・。貴女は悪魔よ・・・。」
「悪魔!?あはははっ!貴女知らなかったの!?私が大天使様な訳がないじゃない!私がただの人間な訳がないじゃない!!」
「れ、れいこ・・・?」
れいこは、いやらしく自分の指を舐めるとその指でゆりの唇をなぞる。
「私はね、特別なの!!欲しいものは全部手に入れることができるし、それを壊せる!苦しみを与えることができる!そうよ、私は特別なの!!手に入らないものなんてないのよ。ぜええんぶ!!私のもの!!あの子も!この子も!!貴女も!!!あはははは!!」
ゆりが口を押さえながら震えているとれいこは片方の口角だけ上げて微笑む。
「ねえ、ここで逃げるとか言わないでよ?勿論まだ私に付き合ってくれるよね?」
戻れないところまで来てしまった。
私もれいこも。
「・・・馬鹿にしないでよ!!私を誰だと思っているの?のぞむところじゃない!」
「そういうところ、私、すごく好き。」
徳島すみれ。
彼女は一体何者なのだろう。
れいこをここまで壊して、狂わせて。
ただの女の子なの?
もしかしたら彼女の方が・・・。
そう思った時、ゆりはれいこに噛みつかれた。
すみれより我が身のことだけ考えよう。これ以上、れいこに呑み込まれないように。
狂乱の夜が始まる。
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