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次の読書会のLINEが瀬川から来て、ちょっと迷った。 あれから楓は何も言ってこないし、どういう気持ちなのかもなにもわからないまま放置されてて、こっちだけ動揺してるみたいで馬鹿みたいで、でも動揺は確かにあった。顔を合わせるのは気まずい気持ちと、気まずくても顔合わせたほうがましっていう気持ちがせめぎあって、後者のほうが勝ってた。指定の2冊は素直に読む。なんでこれかなーっていうチョイスで、感情移入してしまってしんどい。いつもはわりとさらさらなんでも読めるほうなのに、読んでは止まり読んでは止まり。まるで集中できなかった。 今回も楓の家だったのに、瀬川は来なくて、あたしたちは2人きりだった。今まで連絡なく遅れたことなんてなかったのに。 2人だけで顔を合わせて、ちょっとというかものすごく気まずい。 楓が口を開く。 「俺、今度手術するんだよ。だからまた入院するんだけど、来月になるかな。死亡率も数%くらいなんだし生死にかかわるようなものじゃないと思ってていい。そんな心配いらないから。」 急にされる病気の話に戸惑う。楓があまり自分から言わないから症状も病気すらよく把握してなかったことに改めて気づく。 そこでまた沈黙。気まずい。 できることなら今すぐ帰りたいような独特の空気。こんな空気、今まであたしと彼の間になかったのに。この居たたまれない沈黙に、困惑しかない。 で、楓が言い出す。 「単刀直入に言うわ。俺はお前が好きだから、抱きたい」 単刀直入すぎて固まる。ちょっと固まって、なんとか言葉を絞り出す。 「え?本気で言ってる?」 「勿論、本気。で、お前はどう?」 この前のバスのことでそういう感情なのかなとあたしだって全く考えてないわけじゃない。でも今までのあたしたちにそんな雰囲気なかったのに急展開すぎて、いろいろ飲み込めないで思考がまとまらない。まとまらないけど、まとまらないまま、とてもとても攻撃的な言葉だけが思い浮かんでしまって、頭の中から打ち消せなくなってしまう。 なんであたしはこんなことを彼に言おうとしてるんだろう。 数少ない、今までの短い?人生の中でもほんと稀少なうまが合うって思えた相手に、他の誰にも言ったことがないような、不愉快なことをなんで口から吐こうとしてるんだろう。正気なのって頭のどこかでもうひとりのあたしが囁いて、あたしの心に問う。それなのに、言葉が、あたしの理性では止めておけなくて、飛び出してゆく。 「病気を利用しないで。そんなの卑怯」
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