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「ちょっと軌道修正な。よしそろそろ次、こっちに移ろうか」
しばらく雑談になってしまってたから司会者よろしく瀬川が促す。
「これな。これ長かったわ。ただあまりに面白くて一気に行けた。すげえ面白かった」
「面白かったけど、ごめん、これもやっぱり好きじゃないや」
「これも?おまえワガママだな」
「ワガママってなに。っていうか、本の好き、嫌いなんてワガママでいいでしょ。好みなんだからさ」
「ごめんごめん、それはそうなんだよな。でも、こんな面白かったのにって意外でさ。どこが嫌なんだ?」
「うーん嫌っていうかね、ストーリーはすごいんだと思う。もう最初の最初っから引き込まれるし、結構なスピードで一気読みしたんだよね。結末が知りたくなるタイプのストーリーだし。でも後半にいくにつれて、あれ?なんだろうなんか期待してたストーリーじゃなくて、あれ?あれ?って」
「ま、確かに終わり方はな、ちょっとしっくり来なかったかな。あと2巻くらいあってもいいかなというくらいもったいない終わり方だった気はした。というかもっと読みたいっていう欲に近いのかもしれない。久々にこんな面白い本読んだっていう興奮に近い感触もってんだけど、意外にふたりとも冷静というか評価高くなくて結構びっくり。」
「いや、俺は楽しんだよ。すごい良く出来てると思うけど、ちょっとテーマも重いし読後感が厳しいかな。別にハッピーエンドが好きだとも言わないが、放り出されるのはなんか腑に落ちない。もうちょっとなんとか、読後感らしい締りがほしいというか。序盤の設定がぶっとんでて引きずり込まれた分、ちょっと中途半端さに肩透かしになったかな。晶もそこだよな?」
「そこもあるし、あとは、なんか別に男性女性でわけるつもりないんだけど、この女のキャラが気持ち悪い。好きになれない。男は別に気にならないのに描かれてる女が嫌い。というかあたしの好みに合わなくて乗れない」
「やっぱワガママじゃんお前」
「ワガママは否定してないって。そうだもん。ワガママって悪いことでもなんでもないと思ってるんだけど。違う?」
瀬川がにやにやしてるのにちょっとイラッときながらも大人になって話題を戻す。
「それはいいとして、でもなんか最初はそうでもないんだけど、だんだんこの主人公の女の人に我慢できなくなってきて、それでもう嫌なんだよね。さっきの話じゃないけど残念なジャムって感じ。そうそう、本のつくりっていうか構成?はすごい凝ってて、レイヤードケーキみたいなつくりで、層が見事で圧倒されるんだけど、ジャムが私の苦手なキウイジャムが塗られてるの。見事なことはわかるけど、すごいんだろうけど、やっぱり駄目。だって本って好みでしょ?」
「なんの話なんだよ、今日は。ジャムだのケーキだの、なんか腹減ってきたわ俺」
「腹はいいけど喋ってると喉乾いた」
「自販機あるし売店もある。買いに行くか?」
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