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「ね、どうやって本のチョイスしてんの?」
好奇心から聞いてみる。
瀬川のチョイスはわりといいと思ってる。
古典っぽい有名作品と、比較的最近の一冊の組み合わせにして選んでくれてたり。
「あーTwitterの読書垢もってるんだけど、それでひっかかったやつをメモに残しててそこから選んでる。あんまりボリューム重すぎず、軽すぎずなものがいいと思ってて、あと単純に自分が読んでみたかったやつでもある。かなり長いのもあったよな、あれは読みたかったやつだから」
「へー読書垢なんて作ってるんだ。いいなあたしも始めようかな」
瀬川は笑って言った。
「やめとけよ、ああいう場所はオトナになって書くんだから。ここで吐いてるような毒ばっか吐くのは危険すぎる」
「失礼な。でもそうなのか、公開だと気を使うものかもね、で非公開だと自分用メモにしかならないし、広がりに欠ける?」
「オレは苦手なんだよなー、そういうの」
と、楓が口を挟む。
「だろうね」
「だろうな」
瀬川とあたしがハモったので三人で顔見合わせて爆笑になった。
しっくりくる友達がいるってこんな満たされるものかなって思った。
友達はそれなりにいるんだけど、なんというか一緒に行動してるけどしっくりは来てない。多分お互いに。
あたしは特に、浮かないように無理してるとまでは言わないけど、それなりに抑えて喋ってる。なんでかというと、多分ちょっとわかりあえない距離があるのを勝手に感じてるから。でも彼らとは抑えなくても許される感があってそれは性別の違いのせいかもしれないから、ちょっと甘えもないとは言わないけど、異様に居心地がよかった。お互い違うってことを前提にしてるから、違いはけして違和感にはならなかった。そこには違うっていう事実があるだけで、それはみんな織り込み済みだったから。
楓ってそうとう変わってると思う。なんせ絶対返信しないやつだし。
「なんでしないの?」
「なんでいるの?」
「だって伝わったかわからないじゃない」
「既読があるだろ。既読ついたってことは読んだってこと。読んだらわかったってこと。読んでわからんような文章、お前も瀬川も送ってこないから大丈夫」
「なにそれ。変なの。でも読んでわからないときとか聞きたい事があるときだってあるでしょ」
「あるか?ま、あれば聞くよ。そこまで変人じゃないって。聞かないで既読だけついてれば、わかったってこと。それでよくないか?」
よいのか?よい気はしないけど、楓はとにかく既読だけは律儀につけてた。それからも。
「じゃあの8のアイコンってなになんで8?」
楓より先に瀬川は反応する。まさにニヤリって顔。
「楓は8が好きなんだよ」
「なにそれー」
「塾の合宿で、自己紹介するとき、みんな一人ずつ好きなものを挙げたんだよ。まあみんなサッカーが好きですとか、なんとかいうタレントが好きですとかそういう感じだったんだけど、楓はそこで8という数字が好きですって」
「ええ?なんで数字?」
「深い意味なかった。なんにも思いつかないからさ、なんか急にぱっと出ただけ。ああいう場所でホントに何が好きか言う気になれない程度に子供だったしさ」
「へえじゃ深い意味なく?」
「ないけど、その後瀬川がなんで8?って聞いてきてしゃべるようになったんだったな、そう言えば」
「2人にも素直に塾の合宿行くような時代があったとは、意外意外」
「まあな。子供としての役目は果たすべきだって考えてる程度には大人だったんだよ。お前と違ってな」
「なにそれ、むかつく」
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