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さっきから食べる様な動きをしてるものの、まったく手付かずのままの料理。本人は食べている様に見えてるらしい。食べる必要の無い体……ってか。
向かいに座る紬の手をとるとやっぱ、違和感ありまくりだ。体温も肌の感じもない。何かがあるってだけで。
「紬。俺と一緒にいて幸せか?」
紬は可笑そうに言う。
「どうしていきなりそんな?」
「真面目な話、知りたいんだよ今だから」
すると顔から揶揄い気味の笑みが消えた。
「……当たり前でしょ。なんで」
「そっか。お前にさ、言わなきゃいけないことがあんだ」
「……なんか、あった」
息の震えを堪え生唾を飲む。
「……っ、本当は今日が。今日がお前の誕生日なんだよ」
「え……?」
きっと今までみたいに何を見せても紬にはあの日にしか映らない。だから俺は直接打ち明ける、全部。
「昨日は十月二十九日。お前の一周忌だ……」
「そ……んな。何、言ってんの。変な冗談言わないでよ」
「ちげぇ嘘じゃなーー」
「嘘! そんなのウソッ! 何でそんなこと……わたし、んで……」
椅子がゴトンと倒れた。
「待てって紬……!」
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