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追いかけた先で呼びかけると、鍵を閉められた部屋の中からは鼻を啜る音。そして、聞きたくないと震える声。
「紬、聞いて欲しいッ!
話したことあんだろ幽霊が見えるって……あれお前以外に言ったことなくてそれくらい信じてた。
だから……だからお前を信じて今もこうして話してんだよ!」
無言の扉越しに続ける。
「去年の十月二十九日。あの日……コンビニの前で紬は事故に巻き込まれて死んだ。でもそれから数日経って俺の前に現れた。
はじめはそれこそ、あぁ良かった。まだ紬がいる……とか、思っちまった。
でもそれじゃダメなんだよッ!
このまま紬が前みたく知らねーうちに消えちまうなんてもう嫌だし、何度も繰り返す紬だって救いたい……出来なかった誕生日だってやりたい。出掛けんのが出来なくても、ここで……っく、祝いたい! 伝えたいことだってあんだよいっぱい! だからっーー」
不意に扉が開く。
そこには今まで見たことのない表情があった。
「……なんとなく、わかってたよ私だって……いつからか繰り返してる感覚で。
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