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でも怖いから認めたくなかったッ! 知らんぷりしてればって思ったの!
ずっとこのままでいられ、るならって……っもうさ、もうどうすればいいか分かん、かっ……」
「紬……今まで俺たち嘘禁止にしてきただろ。だからもう……」
すると、ひしゃげた笑みを向けてきた。
「ならさ……もう、わたし仕事いいよね。そばにいて良いんでしょ。ねぇそばに、いて……よっ」
咄嗟に紬の全部を抱きしめた手は、みっともなく震えちまった。
「そばにいる当たり前だろんなもん。ずっと、いる」
そして紬の小刻みに途切れる息が落ち着き始めた頃、身体を離して言った。
「これ、渡すはずだったんだ」
掌に乗る二つの指輪。
「え……」
「紬、俺と結婚してくれ」
すると、グッと唇を噛み締めながら俺の肩に頭を打ち付けてきた。
「……っもう、もうできないじゃん! したかったのに。できな、っい」
俺は、その湿った頬をゆっくり手で包む。
「出来んだろ! お前が認めてくれんだったらいつだって。ここに紬がいて俺がいるだけで出来んだろ、誰が決めたんだよ結婚の条件なんて!
ちんけな紙切れなんていらねぇ。俺と紬の中で完結すりゃいい。
だから紬。愛してる、ずっと」
二、三秒ほど見つめあった後、紬が見せた笑みはいつものそれに近かった。
「っ……ばか。順番、逆じゃん」
「ちょっと、緊張した」
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