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紬が作ってくれたメシも食わず呑気に寝込んでから出勤した俺が、事故を知ったのは店のバックヤードのテレビで、だった。
クソすぎんだ何もかも、全部……。
「……そんで、聞きたいことって」
妙な間が生まれてから、視線を下げた妹はなんともつかぬ顔で言う。
「……私はお姉ちゃんが幸せだったのか、知りたかった。それだけ」
そして、言葉をつっかえた俺を待つことなく再び口を開いた。
「口ではそう言ってたけど、私のこと心配してわざとかもしれないから。
私の知らないお姉ちゃんを、あんたなら知ってるでしょ。お姉ちゃんは、どうだった……?」
「どう、て……」
出逢いはベタなナンパだった。
カフェで漫画読んでるとこに声かけたら軽くあしらわれちまって。だから一度店出て、同じ漫画買ってから戻ってきて奇遇じゃんとか言ってみせたら、まぁこの何がハマったのかいきなり笑いはじめて……。
でも後で分かった。あんとき俺が息切らしてたことにアイツはウケたらしい。そりゃ息も切れるさ、駅前の本屋まで往復二十分かかんだから。
それからは喧嘩もしたし、泣かせることもあった。でもそれと同じくらい笑い合って共感し合ってたくさん楽しんだ。全部本気だった、俺たちは。少なくとも俺はそう思ってる。だけど……。
「……わかんねーよ、んなこと。
でも最後に、二人で行った横浜の夜景デートでさ。あいつは俺と巡り会えて良かったって、言ってくれたんだ。すげーいい顔でな。
俺は……そういう顔のためにいろいろやってきたつもりだ」
「……あんたのどこが良かったのか、今でも正直私には分からない。
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