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目を閉じて、無音からザザッという砂嵐に変わる。
三回目にもなると慣れて来たのか、耳を抑えずに耐えられるようになった。
無機質なキィーッというドアの音がして目を開ける。
そこで腕時計に目を向けると、やはり四時二十四分で止まっていた。
今日も烏崎は変わらず黄金色の夕暮れ空が広がり、稲穂の緑の絨毯が波打つ。
ヒグラシが哀愁を漂わせ、雲間からは天使のはしごと呼ばれる陽光が放射状に大地に降り注いでいた。
「三回目。これで終わり」
駅員の口元がにやりと笑みを作る。
ここを訪れる事が出来るのはこれで最後。
あれから駅員の言葉の意味を考えていたが、恐らく四度目に来ようものなら、もう帰れないという事だろう。
僕は「わかってます」とだけ言って切符を奪う。待合所に入り、ノートを開いた。
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