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泣いて、泣きじゃくって、気付いたら空は幻想的な深い青に染まっていた。
山の際だけが濃いオレンジ色をしている。
駅舎の時計はは六時を過ぎていた。もう少しで電車が来てしまう。
結局、その後もノートに返事は無く、僕の謝罪の言葉だけが、震える文字で記されていた。
「二回目。あと一回」
切符を切った駅員が、また言った。
「それ何なんですか」
駅員は黙ったままだ。切符挟みをかちかちと鳴らしている。
これ以上話し込んでまたあの不気味な顔を見せられても嫌だ。
僕は「もう良いです」と、切符をポケットに仕舞って電車に乗り込んだ。
「ここから帰れる回数」
「は?」
ドアが閉まりそうになり、慌てて乗り出した身体を引っ込めた。
僕以外の乗客がいない電車は走り出す。
来た時と逆の手順で帰る。
目を閉じたまま十数えて、音が次第に戻って来たら六つの駅が過ぎるのを待つ。
目を開けると、いつもの風景に戻っていた。
さっきまでがらんとしていた車内にも仕事や学校帰りの人たちがいて、見慣れた風景が窓の外を過ぎ去っていく。
駅員に切られた切符には、今はその跡も残っていなかった。
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