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恐れる必要がないことはわかっている。
それでも “彼ら” の行動は、
時として想像を超えてくる。
あんなにも脆い身体で巨人の如き行為をなし遂げ、かと思えば恐怖心を発端に底知れぬ残忍さを露わにする。
だから境界地区といえど、
あえて “彼ら” と関わる者は少ないし、
ましてこんな端の端で商売する者は滅多にいない。
もっとも店主はそこに商機を見出したのだが……
居住区の中心部で生まれ育ち、
“人間さん” を都市伝説扱いする空気に慣れた紫咲青年には、少々酷だったかもしれない。
「でもよかったな紫咲、
あのお客様に研修の成果を見せられて。それに、
鉢植えまでお買い上げいただけたじゃないか」
「それは……はいよかったです……
でも、ねぇ店長、これからもやっぱり “人間さん” って来るんですかね。僕恐いですよ。
また何か間違えて、怒らせたりしちゃったら……」
相変わらず泣きそうな声で、
紫咲青年はエプロンの端をくしゃくしゃに揉む。
それをそのままにさせてやりながら、
店主は息子を力づけるように細い肩を叩いた。
「俺もやり方を考えていくから、心配すんな。
必要以上に恐がることはないんだ……
そうすりゃ共存できなくても、
交流くらいできるもんだぞ」
おわり
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