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怯える必要がないことはわかっていた。
それでも相手は、楓よりはるかに強靱な力と身体を持っていて、向こうにとって些細な仕草もこちらには致命傷になる。
人間と “異形さん” は何もかもが違うのだ。
だから居住区も分かれていて、
楓が生まれ育ったこの境界地区でも、
あまり交流は見られない。
これから行く中心部なら、
“異形さん” はもはやファンタジー扱いだろう。
──また来てくださいって言われちゃった。
──そりゃ夏休みには帰るけどさ……
もうこんな緊張は嫌だなぁ。
──でも……。
大通りから車の音が響いてくる。
ゆっくりと家路をたどりながら、
楓はあの店で向けられた数々の笑顔を、
何となしに思い出していた。
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