もふもふの災厄

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もふもふの災厄

  いつの間にか眠っていた内斗は設定していたアラームで目を覚ました。7:00、やけに暗い。天気予報は晴れだったはずなのに。これで雪だったらますます行きたくないよなと内窓を開けて外を見た内斗はぽかんと口を開けて固まった。  「…………なんだ、これ?」  半透明な綿ゴミのような灰色のものがフワフワと空から降り注いでいる。かなり積もっているようで一面灰色だ。家の屋根も道ももふもふとした輪郭になっている。  スマホで情報を検索すると大騒ぎになっていた。未明から降り始めた謎の物体は交通を麻痺させ、電波が狂いやすくなっているということで連絡手段も状態が悪くなっているという。  「え、なにどういうこと?」  わけがわからないまでも社会人として一応会社に連絡を試みる内斗。5回連続で途中で切れてしまい、そろそろ諦めるかと思い始めた瞬間に相手が出た。  『もしもしっ!?』  「あ、海入です。おはようございます」  『海入くん! おはよう、僕、空野です。えっと、僕が判断することじゃないと思うけど、無理に来ない方がいいと思う』  「と言いますと?」  『車もどんどん動けなくなっているんだ。窓から見える道路、立ち往生した車で埋まってて。さっき課長の旦那さんからも電話があって、課長も来れないって。無理に来るのは危ないと思うから』  やった、仕事を休めると内心で小躍りしながら神妙な声を心掛けて気になっていたことを口にする。  「空野さんは出勤できたの?」  『あー……ちょっと残業を』  「今、朝だよ?」  『徹夜しました』  「帰ってないんかいっ!」  この仕事大好き人間め! と言いたい気持ちを押さえて空野へ休むように忠告して、今日は休むと伝えて電話を切った。ふるふると体が歓喜に震え出した。仕事が休み。堂々と休める。  「1日フリーだ!」  家に引き籠っているのが大好きな内斗である。たまには思い切りゲームをするか、それとも片付けしつつ録りためていたドラマを観るのもいい。るんるんと弾む足取りでまずは朝ごはんを摂るべく動き出す。仕事じゃなければ何もかもが楽しい。
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