星に願いを

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星に願いを

 「あー、仕事に行きたくなーい!」  本日はブルーマンデーが恒例の日曜日。早く寝なけれ寝不足で辛いのに、早く寝れば明日があっという間に来てしまう。少しでも長く休日を満喫したくてグズグズするのは俺だけではないはずだ。古今東西、ありとあらゆる場所で同じような後日の健康と仕事の逃避を天秤にかけたぼやきが渦巻いているに違いない。そう自分だけではないと宥めようとするも気の重さはどうにもならない。ああ、なんで明日は来るんだ? そりゃお金を稼がなきゃ生活は成り立たない。好きな物も買えない。友達や恋人との付き合いだって何もかも金が要る。それが何だってこんなに憂鬱な手段しかないんだ。  海入 内斗(うみいり ないと)は社会人になって15年、飽きもせずに休日が終わる頃には毎回憂鬱になる。ぼやきの限りを尽くす。いい加減、慣れるなり、それなりに過ごす手段なりを手に入れればいいのにどうにも成長のない男である。  「?」  窓の外に光が走ったように見えた。車のライトが反射したには弱い。何となく気になって内斗はベッドの脇にある窓の内窓を開けて外を見渡した。電気の点いている家は少なく、車もいない。気のせいかと窓を閉めようとして視界の端に光を感じた。流れ星だ。  「そうか、今日はふたご座?流星群のピークだったか」  目が夜空に慣れてくるとかなりの数が流れるのが見える。これだけ流れ星が見えるなら願い事し放題じゃないか。ふとそんなことを考えた内斗は子どもじみた自分に笑い、笑いながら3回唱えた。  「仕事に行きたくない、仕事に行きたくない、仕事に行きたくない!」
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