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生まれて初めて、私は探偵になった。もちろん、我流である。
研修も受けていないし、知識と言えば探偵もののドラマ程度だ。
そこで私は、我流なりに探偵の心得を作ってみた。
一つ、対象に接触をしてはならない。
二つ、対象に姿を見られてはならない。
三つ、調査目標を知られてはならない。(この場合は芋のこと)
その日から、午前中は大学に行き、午後は街をうろつくこととなった。プリントアウトした写真を握りしめ、時にはあんパンをかじりながら、時には牛乳を吸いながら歩いた。
実に長い二週間だった。
私はこの期間に、探偵を極めてしまった。
道を歩く人を見るだけで、不倫しているかどうかが分かる。店を外から覗くだけで、その店が悪いことをしているかどうかが分かる。万札を見るだけで、そのお金が汚いものかどうかが分かる。あと一ヶ月も探偵をやれば、地球の起源についても分かるかも知れない。
そして今──、私はあの男の子を見つけた。
美形の友達と笑い合い、サッカーについて話している。野球をやっていても、サッカーに興味を持つなとは言わない。小学生は視野を広げるべきだ。彼が将来すごいラーメン屋にならないとは言い切れない。野球でもサッカーでもどんどんやれ。ただし、ギャンブルには手を出すな。これは経験からくる助言だ。
「じゃあね、ばいばーい」
二人が道を左右に分かれた。
私は対象の子が去っていき、振り返らないことを確認した上で、友達と思われる男の子に近づいた。
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