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渋柿よりも渋い神様が、ついに私の努力を認めてくれた。
この瞬間を待っていた。ようやく出会えた。彼こそ私の運命の人だ!
上着のポケットから写真を取り出し、目標の特徴を再確認する。そんなことをしなくても把握済みなんだけど、念のため、もう一回写真と見比べてみる──。
日に焼けた肌、刈り上げた髪、眉は歪なアーチを描き、笑うとだるまを叩き潰したような顔になる。むっちりした腕、ぷっくら出た腹、足は短く、手の指は太い。愛用と思しき帽子は、畜生な燕で人気の球団のもの。服は写真と同じく、ブルーのストライプシャツ。
名前は知らない。住所も知らない。年齢も知らない。通っている学校も知らない。
見た感じ、小学校の三年生から四年生だ。おそらく野球をやっていて、あの体格からすると、キャッチャーかファースト、シングルヒット狙いの選手ではなく、ホームラン狙いの大器と思われる。
私は彼の後を追った。一緒に歩いている男の子は野球クラブの仲間だろう。友達くんには後でアプローチをかけるとして、今必要なことは二人が別れるまで尾行することだ。
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