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1.唐突なアクシデント
「お菓子持ってきたよん!」
沙弥が、お菓子が満載されたお盆を持って、やってきた。
いつものこと。
二階にある、沙弥の自室での一コマ。
部屋に集っているのは、クラスの仲良し四人組。沙弥、明穂、智夏、緒美。四人の頭文字をとって、チームSATOさん。いつもの、いつもすぎる面々。
四人はおこたに入りながら、ぬくぬくとしていた。
そのうちに『お菓子と飲み物を持ってくるねー』と、数分前に沙弥が部屋を出て行き、そして今し方戻って来たところだった。
各々方は、スマホをいじったり、読書をしていたり、テレビを見ていたりとくつろぎ中。
ちなみに、宿題は既に終わらせた。こう見えてこの子達、結構真面目だ!
成績優秀な智夏と緒美によって、明穂は大助かり。
沙弥は『えー』とか『めんどいー』とか『だるいー』とか『後にしようよー』とか、散々ぶつくさ言っていたけれど、結局みんなにあわせて頑張ったのだった。偉い偉い!
「お、ま、た、せ~。……ぬひょっ!」
沙弥は、足元に置いてあった分厚い書籍(超絶大技林'97年春版)につまずいて、盛大にコケた。スカートがまくれて、かなりもろパンしちゃった。
「んょわっ! 沙弥ぁ。何すんの~!?」
お盆に満載されたお菓子が、明穂の頭上でバラバラとばらまかれる。幸いな事に、全部小袋入りだったので、被害は軽微。飲み物はペットボトルだったので、明穂の頭に少々ベンッと当たったりしていた。
だけど……。
「んひゅ?」
「沙弥ちゃ……ん!?」
沙弥は智夏を押し倒し、弾みで、ちゅっとしちゃったのだった。
ほっぺでもおでこでもなく、唇同士で!
「沙弥。私の前で、どういうつもりかしら?」
緒美の笑顔が怖い。
「事故事故! アクシデントっす! 見ればわかるっしょ!?」
必死に事故だとアピールする沙弥。NTRの意図がないことを伝える。
「沙弥ぁ。う~」
嘆きの明穂。
「だー! 事故だっつってるっしょ! 悪気なっしんぐっすよ!?」
それは緒美も明穂もわかっている。けれど、なんだか納得がいかない。
「もぉ。二人とも大きな声出さないで。……沙弥ちゃん、大丈夫? どこか、ぶつけたりしてない?」
「大丈夫大丈夫。ごめんねともともちゃん。うっかりしてたわー」
智夏はちらりと、緒美と明穂の方を見て、そして言った。
「私ね……。沙弥ちゃんのこと、好きだから。気にしてないよ?」
それでも恥ずかしいのか、頬をほのかに赤らめる智夏。
可愛い! 緒美と明穂は、智夏の純情な姿に心を打たれた。ずっきゅんときた。
そして……。
「明穂。覚悟はいいかしら?」
「いーよ。どんとこい! だよ」
なぜか、緒美は明穂と向かい合ってた。
二人とも、真剣な表情。
「緒美ちゃん?」
「明穂? どしたん?」
明穂は、静かに黙ってさえいれば、歌劇団の男装役が似合いそうな、中性的な美人。ボーイッシュなイメージ。
緒美は、ゴージャスなウェーブがかった髪の、大人の雰囲気を漂わせた女の子。中学生離れした、美人さん。
「……」
「ん」
そんな、誰からも目を引くような美男(?)美女の二人が、突然抱きしめあって、そっとキスをしていた。
それはさながら、ラブストーリーのワンシーン。
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