降りつもる塊

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もう一ヵ月も過ぎれば春が来るというのに、大粒の白い雪が空から降ってきた。 「これはつもるぞ」 子供と手をとり街を歩いていた父親が言った。 丸く白い塊は、ゆっくりと地面に降り積もるが、溶ける気配もなく、球体のまま積み重なっていく。 「これ!雪じゃないわ!」 すれ違いざまに若い女が大きな声で叫ぶ。 続けざまに見知らぬ男も大声で発した。 「うぁ!目が合った!」 積みあがる白い塊は雪ではなく小さな目玉であった。 物凄い勢いで積みあがっていく目玉は、雪と違って溶ける事もなく、街を埋め尽くす勢いで重なりあう。 街を歩く人々は目玉に押しつぶされ、建物に避難している人々は、積みあがった目玉により出入口がふさがれ外に出る事もできない状況。 やがて政府が動き出し、宇宙ロケットで地球を探索することに。 「こ、これは」 そこで宇宙飛行士が見たものは眼球。 地球そのものが巨大な目玉と化していたのだ。 宇宙は、ひとつの巨大生命体であった。 地球は宇宙生命体の目であり、永い眠りから目覚めた。 そして長年蓄積された目クソが空から降り注いできたのが今回の現象だと判明。 我々人類は、人間の体内に生息するミトコンドリアのようなもの。宇宙という生命体にとって、必要不可欠な存在かもしれないが、意思疎通ができるものではない。 地球という目玉、宇宙という人体。 我々、人類は、この宇宙生命体の健康を維持しなければ存続できない運命なのである。 END
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